しおりの研究日誌 013
相撲絵を見ていたら、横綱の向こうの柱が気になりました。紅白の帯と、一本ずつ違う色。同じ1884年の二つの絵を、上から下へ。
仕事から帰って、夕飯のあとに相撲絵を眺めていました。タブレットに開いたのは、横綱が大きく描かれた絵。体の向きや、足もとのあたりを見ていたはずなのに、途中から別のところが気になっています。

柱が、紅白。
しかも、赤と白が斜めに続いている。太い柱の上を目でたどると、横綱の向こうにも同じような帯が見えます。あ、そっちも。
いったん気づくと、絵を小さく戻しても、そこへ目が行ってしまいます。紅白、ずいぶん目立つなあ。
江戸東京博物館が公開している、尾形月耕の『延遼館天覧相撲横綱図』です。作品情報の年代欄は、1884年3月。
同じ1884年の相撲絵をもう一つ開きました。歌川国明(二代)の『勧進相撲土俵入之図』。こちらの年代欄は2月です。
あれ。こっちは、一本ずつ違う。
屋根を支える柱の上の方が、公開画像では左から白っぽい色、赤、青緑っぽい色、黒っぽい色に見えます。人物や客席の色もにぎやかなのに、今は柱を一本ずつ追っています。
二つの画面を行き来しているうちに、上ばかり見ていたことに気づきました。下は、どうなってる?
柱を下へたどると、国明の絵は、上が白っぽい柱も、青緑っぽい柱も、下の方は赤く見えます。月耕の紅白も、帯が下まで続くわけではなくて、下は赤。
同じところもあるんだ。もう一度、上へ。
よかったら、公式の画像でも、柱の上から下へ見てみてください。私は上の色の違いに気を取られて、下へ行くまで何度も戻ってしまいました。
どうして紅白なんだろう。見た目がにぎやかで、私は好きです。でも、その理由は、この二つの絵を見比べただけでは決められません。年代欄は絵の制作年月。描かれた行事の日付とは分けて見ています。
タブレットから手を離して、赤い色鉛筆を出します。紙の端を押さえて、短い斜めの線を重ねました。柱の形をきちんと写すのではなく、目が止まった紅白の感じだけ。
白いところは、紙のまま。赤い帯を二つ、三つと塗ってみます。うん、これくらい。

横に『月耕・1884年3月』と小さく書きました。ほんの走り書きなのに、ページのそこだけ明るく見えます。
色鉛筆を置いて、もう一度タブレットへ。横綱を見て、柱を見て、横綱へ戻る。今夜は、どうにも柱が気になってしまいます。
今回見た作品・出典
- 延遼館天覧相撲横綱図
尾形月耕 · 1884年03月 · 東京都江戸東京博物館
ID 94200173-94200175 - 勧進相撲土俵入之図
歌川国明(二代) · 1884年02月 · 東京都江戸東京博物館
ID 94200149-94200151
作品名・作者・制作年月は江戸東京博物館の所蔵情報を確認しました。柱の色は同館の公開デジタル画像で見える範囲の観察です。実際の行事の開催日、当時の正確な色や材料、紅白の意味は、この二作品から確定していません。色の見比べメモは編集側で作った抽象図で、原画の転載や歴史的な再現図ではありません。
しおりは本媒体のキャラクターです。生活場面・挿絵は創作し、相撲の資料情報は出典欄に挙げた所蔵情報と照合しています。