弓取式はなぜ最後にある?結びの勝者を映す弓の舞

最終確認:2026年10月7日
一日の終わりを告げる柝と夕暮れの土俵のミニチュア

弓取式は、その日の結びの一番が終わった後、弓取を務める力士が立行司から弓を受け、決められた所作で振る儀式です。日本相撲協会は、結びの勝者に代わって勝利の喜びを表す舞と説明しています。終演のおまけではなく、最後の一番の結果を受け取って一日を閉じる時間です。

結びが終わると、席を立つ人が増えます。予定が許せば弓取式が終わるまで残り、弓取の力士がどちら側から土俵へ上がるかを見てみてください。東か西かは日付で決まるのではなく、たった今の勝者とつながっています。最後の勝敗が、別の力士の入場方向にまで残るのです。

結びの勝者が東なら東側、西なら西側から入り最初に同じ側へ引く関係と、弓の約2.10メートル・約700グラムを分けて示す図
結びの勝者が東なら東、西なら西から土俵へ上がり、最初に弓を抜く側も同じです。弓は約2.10m、約700g。回す回数は決まっていません。図の左右は実際の土俵配置ではありません。
図の詳しい説明

E→E、W→Wは、結びの勝者側と、弓取力士が入場し最初に弓を抜く側が同じであることを示します。左右の配置は実際の土俵の方角ではありません。別枠の約2.10m・約700gは協会が示す弓の長さと重さです。

図: SUMO ARCHAEOLOGY CLUB · 図の情報源 1 · 図の情報源 2 · 図の情報源 3

勝った側から土俵へ上がる

弓取の力士は結びの一番を向正面で見届け、東方力士が勝てば東から、西方力士が勝てば西から土俵へ上がります。弓で土俵を掘るようにする所作は「弓を抜く」と呼ばれ、これも勝った力士の方角から先に行うと協会は説明しています。

初めから所作の全順序を暗記する必要はありません。結びの勝者が東か西かだけ覚え、その側から弓取が現れるかを確かめる。取組と儀式が一本の線になります。弓取の華麗さだけを眺めていた時より、いま終わった一番が長く続いて感じられます。

弓は約2.1メートル、振る回数は固定ではない

公式解説によると、弓取式で使う弓は長さ約2メートル10センチ、重さ約700グラム。弓を空中で振り回す所作には邪気を取り払う意味があり、所作の順序は決まっている一方、空中で回す回数は特に決まっていません。

一見すると細い弓ですが、力士の身長を超えるほどの長さがあります。遠い席では回数を数えるより、弓の先が描く円を一度だけ追う方が分かりやすいでしょう。同じ儀式でも、弓の速度や間の取り方に務める力士の身体が現れます。

幕下以下でも、大銀杏と化粧まわし

弓取を務めるのは基本的に幕下以下の力士です。ただし弓取式では、大銀杏を結い、化粧まわしを締めて土俵へ上がることが公式に確認できます。通常の番付上の装いだけを知っていると例外に見える場面です。

有名な幕内力士の名前だけを追っていると、弓を振る人を「係の人」のように見落とすかもしれません。その人も番付に載り、稽古し、取組を取る力士です。翌日の早い時間に同じ四股名を番付や取組表から探すと、夜の儀式と下位取組がつながります。

弓を落としても、手では拾わない

まれに弓を土俵へ落とすことがあります。協会の解説によると、弓取は土俵へ手をつかず、弓を足の甲へ載せて跳ね上げ、手で受けます。土俵外へ出た場合は呼出が土俵へ戻し、そこから同じように足で跳ね上げます。

これは失敗を期待して見るための知識ではありません。むしろ、勝者の代わりを務めるため土俵へ手をつかないという原則が、例外時の動きまで決めていると分かる細部です。通常どおり終わる日には、弓を落とさず所作を終えるところまで静かに見届ければ十分です。

歴史は「起源確定」と書かない

日本相撲協会の解説自体が、弓取式の起源を「定かではありません」としています。その上で、平安時代から弓を持つ勝者の舞があったとされること、1791年の上覧相撲で小野川に勝った谷風が弓を四方へ振ったことが現在の原型とされることを紹介しています。

したがって「1791年に弓取式が始まった」と断定はできません。記録と伝承が重なった説明として受け取り、確かな現在の所作を先に見ます。歴史の魅力は、分からない部分を埋めてしまうことではなく、いま続く動きのどこまで遡れるかを一緒に探すことにあります。

最後の柝が、一日の句点になる

弓取式が終わると、呼出が「あがり柝」と呼ばれる柝を入れます。協会は、その音が入った時を「打ち出し」の時刻と説明しています。終了時刻は当日の進行で前後するので、観戦日の案内を確かめておきましょう。

次に会場へ行く日、見る一点は結びの勝者の側です。その側から弓取が上がり、先に弓を抜く。最後に木の音が鳴るまで席にいる。すると弓取式は余韻ではなく、勝敗を受け取り、邪気を払い、一日の相撲を閉じる短い物語になります。

出典

  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.16」(2022年1月24日公開、2026年10月7日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.1046」(2024年11月19日公開、2026年10月7日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.1399」(2025年11月7日公開、2026年10月7日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.955」(2024年8月20日公開、2026年10月7日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.622」(2023年9月22日公開、2026年10月7日確認)

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