
ちょんまげは幕下以下の本場所や、関取の稽古・日常でも見られる髷。大銀杏(おおいちょう)は、十両以上の関取が本場所へ出場する時に結う、はけ先を銀杏の葉のように広げた髷です。「力士は全員いつも大銀杏」ではありません。次の観戦では正面の表情を少し休み、土俵へ上がる直前の後頭部を一人だけ見てください。
黒い髷は遠目では全部同じに見えます。でも、先端が小さく折り返されているか、扇のようにふわりと開いているか。その違いに気づくと、番付の境目が文字ではなく、人の後ろ姿に現れます。
図の詳しい説明
左カードは数本の曲線を小さく折り畳んだ抽象的な繊維束、中央カードは同じ起点から扇状に広がる曲線束です。前者はちょんまげの小さくまとまる傾向、後者は大銀杏の銀杏葉状のはけ先という大まかな違いだけを示します。右カードの疑問符と確認記号は、幕下力士の十両取組、弓取式、初っ切りなどの例外があるため、大銀杏だけで現在の番付を断定しないことを示します。頭、顔、髪の質感、結い方、寸法、角度、人物識別、歴史的髪形は描いていません。
大銀杏は、先端の形を見る
日本相撲協会は、頭頂部へ載る髷のはけ先が銀杏の葉に似ているため「大銀杏」と呼ばれると説明しています。横からより、後ろや斜め後ろから見ると、油で整えられた髪の先が薄く大きく広がる形を見つけやすいです。
協会の力士規定では、十両以上の関取資格者は出場に際して大銀杏に結髪しなければならないとされます。十両昇進は給料や取組数だけでなく、土俵へ上がる髪形まで変える境目です。
ただし、関取も稽古や日常生活ではちょんまげで過ごすと協会は説明しています。巡業会場で午前の稽古と午後の土俵入りを見比べると、同じ人の髷が一日の中で変わることがあります。
幕下以下なら、いつも大銀杏ではない?
基本は、十両以上が大銀杏、幕下以下がちょんまげです。ただし番付だけで決めつけると、面白い例外を見落とします。
休場や終盤の入れ替え戦などで、幕下力士が十両の取組へ出る場合、協会によると、その力士も大銀杏を結って土俵へ上がります。上位へ対する敬意によるしきたりです。一方、まわしは幕下の稽古まわし、さがりも木綿の柔らかいものを使います。髷だけが一足先に十両の装いになるのです。
弓取式や初っ切りを務める力士も大銀杏を結う例外として協会が挙げています。だから大銀杏を見て、ただちに「この人は十両以上」と断定するのではなく、「今日はどの役目で結っているのだろう」と一歩だけ続きを見るのが正解です。
髷を作るのは床山
力士の髷を結う専門職が床山です。日本相撲協会は床山を協会員として掲載し、それぞれに床山名、格付、所属部屋があります。髷は力士が鏡の前で自分一人で整えるヘアセットではなく、部屋を支える専門技術です。床山の格付や道具を詳しく知りたい人は、別記事「床山と大銀杏」で深掘りできます。この記事では、観客が二つの形を見分けることへ範囲を絞ります。
協会の解説では、大銀杏を結う技術の習得には10年以上かかり、熟練した床山でも一人に20〜30分を要すると「言われています」。この時間は全員一律の計測値としてではなく、公式記事が示す技術の目安として扱います。短い土俵入りの前に、その何倍もの準備時間が折り畳まれています。
昔から二種類だけだったわけではない
現在の見分け方を、そのまま江戸時代の錦絵へ当てはめることはできません。協会の歴史解説では、髷は時代の習慣や風俗によってさまざまな形があり、大銀杏は幕末頃から流行し、明治中期頃に力士の標準形になったとされます。1871年の断髪廃刀令の際も、力士の風俗として結髪が許され、現在へ続いたという説明です。
この年代は協会が紹介する相撲史として記し、「最初に誰が考案したか」まで断定しません。髪形の変化には制度だけでなく流行も混じります。古い絵の髷が現代と違っても、絵師の間違いと決めつけないでください。
次に見る一点:銀杏の葉が開く場所
次の十両土俵入りでは、一人の後頭部だけを追い、はけ先が左右へ開く輪郭を探します。その後で幕下の一番を見ると、小さくまとめたちょんまげとの違いが分かります。もし幕下対十両の取組なら、髷とまわしが示す階級のずれも観察できます。
髷は勝敗に関係ない飾りに見えて、実は「どこまで上がったか」「今日は何を務めるか」「誰が時間をかけて支えたか」を静かに載せています。背中へ回った数秒を好きになると、土俵へ上がる前から、もう一つの勝負が始まっているように見えてきます。
出典
- 日本相撲協会「大相撲クイズ No.344」(2022年12月18日公開、2026年9月2日確認)
- 日本相撲協会「大相撲クイズ No.813」(2024年3月31日公開、2026年9月2日確認)
- 日本相撲協会「大相撲クイズ No.864」(2024年5月21日公開、2026年9月2日確認)
- 日本相撲協会「大相撲クイズ No.17」(2022年1月25日公開、2026年9月2日確認)
- 日本相撲協会「協会員のご紹介・床山一覧」(2026年9月2日確認)
確認に使った資料リンク
各リンクは記事内の対応する主張の確認に使用しました。リンク先全体を無条件に正しいとみなすものではありません。
記事確認日:
- 日本相撲協会 大相撲クイズNo.344 大銀杏一次資料(記事の確認日時点)
- 日本相撲協会 大相撲クイズNo.813 力士の髷の歴史過去の一次資料(当時の記録)
- 日本相撲協会 大相撲クイズNo.864 幕下と十両の取組での大銀杏一次資料(記事の確認日時点)
- 日本相撲協会 大相撲クイズNo.17 十両昇進で変わること一次資料(記事の確認日時点)
- 日本相撲協会 協会員紹介 床山一覧一次資料(記事の確認日時点)