しおりの研究日誌 014
ぱっと白い扇子。その向こうで、呼出さんが大きく口を開けています。顔より先に、白いところへ目が行きました。

仕事から帰ったあとの夜。ベッドの端に腰を下ろして、タブレットで日本相撲協会の写真を見ていました。取組の最中ではなく、力士の名前を呼ぶ場面です。
扇子の折り目、下の方に並ぶ細い骨、それを持っている右手。白い面には、文字も絵も見当たりません。
説明を読むと、呼出が使う『白扇(はくせん)』は、白色無地と決められているそうです。この扇子を開いて、上端へ視線を送り、両力士を呼び上げる。
上の縁、なんだ。
私は白い面の真ん中をじっと見ていました。そこから少し上へ、扇子の縁へ目を移します。顔へ戻って、また縁へ。扇子だけを見ていたはずが、掲げている人の姿も気になってきました。
協会の説明では、この所作には、土俵を汚したり、力士に息をかけたりしない心遣いが表れているとのこと。白い扇子を眺めていただけでは、そこまでは分かりませんでした。
もう一度、写真へ。今度は、前に出した手と、開いた口元を一緒に見ています。小さく表示しても、扇子の白がはっきり残る。持っている手は、こんなところにあったんだ。
力士の名前が呼ばれると、私はたいてい、その力士の方へ気持ちが飛んでしまいます。早く見たい。今日はどうだろう。声は聞いていたのに、呼出さんの手もとをこんなに長く見ていることは、あまりありませんでした。

写真から声は聞こえません。それでも、大きく開いた口元を見ていると、名前が長く響くあの感じを思い出します。好きな力士を待っている間の、ちょっとそわそわする感じまで。
タブレットを少し遠ざけて、写真全体を見ました。白い扇子、右手、顔。ああ、やっぱり白いところへ目が行く。今夜は、呼び上げる人の写真から、なかなか先へ進めません。
出典・確認できる資料
白扇の白色無地という定め、上端へ視線を送る所作とその説明は、日本相撲協会の「大相撲クイズ No.1273」に基づきます。掲載写真から視線の先を確定したものではありません。本記事の呼出のイラストは説明のための創作で、特定の人物・取組を再現したものではありません。公式写真は出典リンクからご覧いただけます。
しおりは本媒体のキャラクターです。生活場面・挿絵は創作し、相撲に関する説明は出典欄に挙げた資料と照合しています。