相撲の「さがり」は何?一本ずつ糊で固める取組の房

最終確認:2026年9月2日リンクした資料は、記事内で対応する主張の根拠としてのみ使用しています。時刻・料金・施設運用は変更されるため、来場前にリンク先の現行案内も確認してください。
糊で棒状に整えた紺色のさがりと、絹糸や櫛を並べたミニチュア

取組中、力士の廻しの前から垂れている細い房が「さがり」です。関取のさがりは締込と同じ生地の絹糸で作り、一本ずつ糊で棒状に固めます。本数は「土俵を割る」を連想する偶数を避け、げんを担いで奇数。もし取組中に落ちても、力士が自分の手で拾ってはいけません。

立合いで二人がぶつかった瞬間、さがりは扇のように開き、次の瞬間には体の間へ消えます。「前を隠す飾り」くらいに見えますが、一本ずつ作り直す手仕事と、落ちた一本にも競技上の扱いがあると知ると、いちばん小さな装束が急に忙しく見えてきます。

場所後にさがりの糊を落とし、絹糸へ戻し、櫛で整え、糊を含ませて一本ずつ棒状に固める循環を四状態で示す抽象図
①場所後、②糊を落として絹糸へ、③櫛で整える、④再び糊を含ませ棒状に固める。線と道具記号は実物・作業手順の再現ではありません。
図の詳しい説明

四枚のカードを環状の矢印で結びます。一枚目は少し曲がった複数の線で場所を終えた状態、二枚目は水滴と柔らかい波線で糊を落として絹糸へ戻す状態、三枚目は歯を持つ無地の櫛記号と平行線で整える工程、四枚目は一滴と直線で糊を含ませて棒状に固める状態を表します。線の本数は実数ではなく、色も実物色ではありません。糸の太さ、糊の配合、櫛の種類・寸法、力加減、乾燥時間、硬さ、身体への付け方、正しい職人作業は資料にないため描いていません。

図: SUMO ARCHAEOLOGY CLUB · 図の情報源

関取のさがりは、締込と同じ色で硬い

日本相撲協会によると、十両以上の関取が本場所で使う締込は絹製で、さがりも同じ生地の「共布」で作られます。公式解説では「締込と同じ生地のトモギレ」と表記されています。前へ挟み込み、垂らして使います。

関取のさがりが左右へ分かれても真っすぐなのは、中へ針金やプラスチックが入っているからではありません。糸を一本ずつ糊で固めているからです。協会の2025年の解説では、天然の布海苔を基本に、強度を補うため別の糊を調合する場合もあるとしています。

一場所ごとに、糊を落として作り直す

激しい取組を重ねると、さがりは折れたり、糊が落ちたりします。公式解説では、本場所が終わると毎場所糊を落とし、絹糸へ戻し、櫛で整えながら改めて糊を染み込ませて棒状にすると説明されています。

画面では一瞬しか映らない部分に、十五日間ごとの手入れがあります。さがりが曲がったままなのは雑だから、とは限りません。その日の取組で受けた力を、細い糸がそのまま見せている可能性があります。見た目を評価するより、まず「これも毎場所作り直される道具」と覚えておく方が、力士の装いへ近づけます。

奇数本だが、決まって19本とは限らない

協会は、偶数が「割れる数」で「土俵を割る」へつながることを避け、さがりを奇数本にすると説明しています。ここから「必ず19本」と固定してはいけません。公式情報が示しているルールは奇数であることです。

次の一番で本数を数え切る必要もありません。立合い前に中央の一本を見つけ、左右がおおむね対称に開く様子を見るだけで十分。締込の色と同じ硬い線が、動き始めた途端にばらけます。

落ちたら、力士は手で拾わない

取組中にさがりが外れることがあります。日本相撲協会の公式クイズは、自分のさがりを力士が手で拾うと負けになり、足で払いのけるか、行司が拾うかのどちらかで処理すると説明しています。

落ちた瞬間に勝負が止まるわけではありません。土俵上では二人の体が最優先で動き続け、その外へ小さな一本を逃がす。次にさがりが落ちたら、拾わないことを不作法と思わず、力士の足と行司の動きを見てください。装束と競技がぶつからないための処理が見えます。

化粧まわしの房との関係は、時期を断定しない

協会の解説は、かつて取組で現在の化粧まわしに相当する装いを締めていたこと、前垂れ下端の馬簾が形を変えて現在のさがりへ受け継がれたとされることを紹介しています。ただし同じページは、変化したそれぞれの時期が不明とも明記しています。

そのため「何年に現在形が完成した」とは書けません。幕末まで締込とさがりが一体で、指がかかる危険を避けるため分離された、という協会の別解説もありますが、細かな年代区分は確定事項として広げない方が安全です。確かな現在の違いは、土俵入りの馬簾は布の前垂れの下、取組のさがりは締込の前にあることです。

次の立合いでは、一本の広がりを見る

次の一番で見る一点は、立合い直後のさがりです。固い線が衝突でふわりと開き、押し合いでは体の間へ折れ、離れればまた前へ現れます。

大きな力士の全身を追えなくても、一本の絹糸なら追えます。その糸は場所ごとに梳かれ、糊を含ませ、また土俵へ戻ってきたもの。勝負の迫力は体重だけでなく、こんな細部にも跡を残します。

出典

  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.318」(2022年11月22日公開、2026年9月2日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.1231」(2025年5月23日公開、2026年9月2日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.773」(2024年2月20日公開、2026年9月2日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.888」(2024年6月14日公開、2026年9月2日確認)
  • 日本相撲協会「大相撲クイズ No.1318」(2025年8月18日公開、2026年9月2日確認)

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