
呼出の「東西東西(とざいとーざーい)」は、東方と西方の力士を順番に紹介している声ではありません。日本相撲協会の公式解説では、観客へ静粛と注目を促す、「隅から隅まで皆々様、ご注目ください」という趣旨の言葉です。主に結びの一番や十両最後の一番で、行司の口上とともに使われます。聞こえたら、会場が次の節目へ向かう合図として一度だけ周囲の音を聞いてみてください。
東、西、東、西。文字だけ見ると、二人の側を交互に呼ぶ丁寧な対戦カード紹介のようです。ところが意味は方角の列挙ではなく、広い客席を端から端まで呼び掛ける言葉。意味を知ると、伸びる声が土俵ではなく館内全体へ向いているように聞こえます。
「皆さん、ご注目を」という呼び掛け
公式クイズNo.823は、「東西東西」を呼出が土俵上または土俵下から発し、観客へ注意を促して静粛に注目してもらう言葉だと説明しています。英語の場面に置き換えるなら、公式ページは “Ladies and gentlemen” に近い表現として案内しています。
だから、東側の客だけ、西側の客だけへ順番に話しているわけではありません。館内の全員を一つの場面へ集める声です。
主に結びと十両最後の一番で聞こえる
協会の説明では、主な使用場面は結びの一番と十両最後の一番で、行司の口上とともに使われます。「毎日すべての取組前に必ず同じ形で聞こえる」とは書かれていません。
一日の流れを知らずに観戦していても、この声が節目を教えてくれます。十両の取組が終わるところ、幕内の最後へ向かうところ。時計の時刻を覚えなくても、土俵上の言葉が番組や会場の章を閉じます。
序ノ口の開始前にいう「東西」とは別
同じ公式ページは、序ノ口の取組が始まる前に、行司が軍配を掲げて「東西」と一言いう場面も紹介しています。こちらは取組開始を宣言するもので、呼出の「東西東西」とは意味が違います。
聞き分けの手掛かりは、回数だけではなく、誰が・いつ発しているかです。
- 呼出の「東西東西」:観客へ注目を促す。主に大きな節目
- 行司の「東西」:序ノ口の取組開始を告げる場面
似た音を一つにまとめず、場面を一緒に見ると迷いません。
起源を断定せず、今の働きを見る
公式解説は、この言葉が歌舞伎や人形浄瑠璃でも使われ、江戸時代中期にはさまざまな興行に見られたと紹介する一方、明確な起源は不明としています。したがって「相撲が発祥」「この出来事が最初」と断定しません。
それでも、今の土俵で何をしている言葉かは見えます。ざわめいていた客席へ長い声が渡り、視線が中央へ戻る。華やかな決まり文句でありながら、役割はとても実務的です。
次に「とざいとーざーい」が聞こえたら、意味を頭の中で訳し続けず、一秒だけ客席を見てみてください。飲み物を置く人、土俵へ顔を向ける人、少し細くなるざわめき。呼出は二人の力士だけでなく、何千人もの観客まで次の一番へ呼び込んでいます。
出典
- 日本相撲協会「大相撲クイズNo.823」「呼出一覧」(2026年9月3日確認)
確認に使った資料リンク
各リンクは記事内の対応する主張の確認に使用しました。リンク先全体を無条件に正しいとみなすものではありません。
記事確認日:
- 日本相撲協会 大相撲クイズNo.823(東西東西)過去の一次資料(当時の記録)
- 日本相撲協会 呼出一覧一次資料(記事の確認日時点)