横綱の「準ずる好成績」って何?直近5人の二場所を並べた

最終確認:2026年9月4日リンクした資料は、記事内で対応する主張の根拠としてのみ使用しています。時刻・料金・施設運用は変更されるため、来場前にリンク先の現行案内も確認してください。
二冊の資料を机に並べて比較するミニチュア

結論からいうと、「12勝なら合格」のような固定式は確認できません。ただ、直近5人の横綱昇進のうち、2場所連続優勝だったのは大の里関だけ。残る4人は、連続優勝ではない二場所を経て推挙されています。

横綱の話を読んでいると、たびたび出てくる言葉があります。

「優勝に準ずる好成績」。

この「準ずる」が、妙に気になります。十二勝なら準ずる? 決定戦まで行けば準ずる? 横綱を倒したら加点?

一度気づくと、小さな落とし戸みたいに見えてきました。内規には入口が書いてあるのに、その先の採点表が見当たりません。そこで採点表を想像するのはやめて、まず実際に横綱になった直近5人の、昇進直前二場所だけを机に並べました。

第71代から第75代までの横綱5人について、昇進直前二場所の勝敗と優勝の有無を全行で比べた表形式図
直近5人では4人が二場所連続優勝ではなく、大の里関だけが二場所連続優勝でした。これは横審の公式分類・採点式ではなく、5件の観察です。
図の詳しい説明

鶴竜は2014年一月14勝1敗で決定戦敗退、三月14勝1敗優勝。稀勢の里は2016年十一月12勝3敗非優勝、2017年一月14勝1敗優勝。照ノ富士は2021年五月12勝3敗優勝、七月14勝1敗非優勝。豊昇龍は2024年十一月13勝2敗非優勝、2025年一月12勝3敗優勝。大の里は2025年三月12勝3敗優勝、五月14勝1敗優勝です。対象は第71代から第75代の5件のみで、この図から一般的な昇進条件や採点式を導けません。

図: SUMO ARCHAEOLOGY CLUB · 図の情報源 1 · 図の情報源 2 · 図の情報源 3 · 図の情報源 4 · 図の情報源 5 · 図の情報源 6 · 図の情報源 7 · 図の情報源 8 · 図の情報源 9

公式の基準は、二つの入口を持っている

日本相撲協会の公式ページが紹介する横綱審議委員会の内規は、対象を「品格・力量が抜群」で、

  • 2場所連続優勝する
  • これに準ずる好成績を残す

大関力士としています。

大切なのは、これは勝ち星だけの公式計算式ではないことです。「13勝+優勝なら何点」という表は、確認できた一次情報にはありません。この記事も昇進判断を採点し直すものではなく、見える二場所の形を観察するだけです。

第71代から第75代までを並べる

対象は鶴竜関、稀勢の里関、照ノ富士関、豊昇龍関、大の里関。第71代から第75代までの5人です。各人について、昇進直前に終えた二場所を日本相撲協会の特設ページや公式プロフィールで照合しました。

| 横綱 | 一場所前 | 直前場所 | 見える形 | | — | — | — | — | | 鶴竜 | 2014年一月 14勝1敗・決定戦敗退 | 三月 14勝1敗・優勝 | 連続優勝ではない | | 稀勢の里 | 2016年十一月 12勝3敗・非優勝 | 2017年一月 14勝1敗・優勝 | 連続優勝ではない | | 照ノ富士 | 2021年五月 12勝3敗・優勝 | 七月 14勝1敗・非優勝 | 連続優勝ではない | | 豊昇龍 | 2024年十一月 13勝2敗・非優勝 | 2025年一月 12勝3敗・優勝 | 連続優勝ではない | | 大の里 | 2025年三月 12勝3敗・優勝 | 五月 14勝1敗・優勝 | 2場所連続優勝 |

5人中4人、80%が「二場所連続優勝」ではない組み合わせでした。

数字だけ見ると、ここで「では十二勝以上を二回ならよい」と言いたくなります。でも、それは一歩進みすぎです。直近5件しか見ていませんし、優勝決定戦、対戦相手、相撲内容、品格、理事会と横綱審議委員会の判断を同じ箱に入れて計算したわけではありません。

同じ「非連続優勝」でも、形が違う

面白いのは、4人の「連続優勝ではない二場所」が同じ形ではないことです。

鶴竜関は14勝1敗で優勝決定戦に敗れ、その次も14勝1敗で初優勝。照ノ富士関は12勝3敗の優勝のあと、14勝1敗ながら白鵬関の全勝優勝に次ぐ成績でした。稀勢の里関は12勝3敗から14勝1敗の初優勝。豊昇龍関は13勝2敗から12勝3敗の優勝です。

並べると、「準ずる」は一種類の代用品ではなく、二場所の高い水準をどう読むかという判断の幅に見えてきます。

もちろん、これは私たちの観察です。横綱審議委員会が4件を同じ名称で公式分類した、と言っているわけではありません。raw CSVでは、連続優勝でない4件を便宜上 EQUIVALENT_OBSERVED と記録しました。この英字、ちょっと研究机っぽくて好きですが、公式用語ではありません。

「準ずる」を曖昧だから無意味、と切らない

採点表が公表されていない理由や、各判断でどの要素がどれだけ重かったかは、この五件の記録からは分かりません。横綱という地位の性質から審議理由を逆算せず、未確認の部分は未確認のまま残します。

一方で、何でも「総合判断」で済ませると読者には見えません。だからこそ、公式判断を勝手に数式化せず、実例と根拠を小さく積み上げるのがよさそうです。

次に横綱昇進の話が出たら、私は「何勝なら?」だけでなく、二場所がどんな並びだったかを見ます。優勝の有無、決定戦、誰に勝ったか、終盤の相撲。そして公式発表が何を理由として語ったか。

「準ずる」という四文字、前より少しだけ面白く見えませんか。

調査方法と更新条件

対象は第71代から第75代まで。昇進直前の完了済み二場所に限定し、地位・勝敗・休場・優勝有無と昇進日をraw CSVへ保存しました。検証スクリプトは、各場所が15日分になること、両場所とも大関であること、既知の勝敗と分類が一致することを再計算します。

次の横綱推挙、内規の更新、公式記録の訂正があったときに再確認します。

出典

  • 日本相撲協会「大相撲クイズNo.1140」
  • 日本相撲協会「第71代横綱 鶴竜 誕生」
  • 日本相撲協会「第72代横綱 稀勢の里 誕生」
  • 日本相撲協会「第73代横綱 照ノ富士 誕生」および大相撲公式ファンクラブ回顧
  • 日本相撲協会「第74代横綱 豊昇龍 誕生」・公式プロフィール
  • 日本相撲協会「第75代横綱 大の里 誕生」・公式プロフィール

確認日:2026年9月2日

確認に使った資料リンク

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